日常を科学したい

理系ママが、日常生活のなかの理科雑学について、ちょっと詳しく書いています。

代謝とATPについて【生物基礎】

今回は、代謝とエネルギーと、エネルギーの受け渡しを行っているATP(アデノシン三リン酸)について、まとめていきます。

 

ご飯がエネルギーになるまでのはなし

私たちはご飯を食べてエネルギーを取り出し、生命活動を行っていますよね。

食べたご飯は消化管の中で、アミノ酸やタンパク質などに分解されます。そして体内に吸収されるのです。吸収された後はというと、必要な細胞に血管を通って運ばれるのです。

腕立て伏せをしていたら、上腕二頭筋にどんどん糖が運ばれる

例えば腕立て伏せをしていたら、上腕二頭筋の細胞に糖が運ばれ、糖から化学エネルギーを取り出して、運動エネルギーとして使われるわけです。

ではどうやって糖からエネルギーがとりだされるのかというと、糖が酸素を使って二酸化炭素と水に分解されることで、糖の中のエネルギーを取り出しています。

糖を水や二酸化炭素に分解する際、エネルギーが生じるのです。

 

複雑な構造はエネルギーをたくさん持っているから、分解して取り出す

なぜかというと、糖の方が複雑な構造をしているからです。例えるならば、モジャモジャアフロの中にはものを入れておけるけれど、坊主にしちゃうと入れられない的なかんじです。黒柳徹子さんの玉ねぎヘアーの中にも飴ちゃんが入っているらしいですし、複雑な構造はいろいろとため込めるってことですかね。

 糖からエネルギーを取り出す働きをしているのは、細胞の中の細胞小器官であるミトコンドリアです。ミトコンドリアは細胞呼吸のはたらきを担っているとされていますが、細胞呼吸の目的はエネルギーを取り出すことなのです。

 

分解したり合成したり。生体内の化学反応を代謝とよびます。

糖が二酸化炭素と水に変化したことに注目です。この反応は化学反応です。もっと細かく言うと、糖に酸素が結合して起きた、酸化反応です。

生体内の化学反応全体のことを代謝といいます。呼吸のように大きな物質を小さな物質に分解してエネルギーが生じる代謝のことを異化といいます。異化の逆で小さな物質から大きな物質を作り出す反応のことを同化といいます。同化の代表例としては、光合成が最も有名ですが、ヒトの体内でも同化は起きています。アミノ酸からタンパク質を合成したり、脂質から脂肪を合成したりする反応です。

つまり、代謝が悪いから太るとか、代謝をあげてるためには有酸素運動だ!とかよく聞きますよね。しかし、生物用語的には代謝というと同化も含んでしまっているわけで。生物用語の意味を踏まえて正確にいうならば、「異化作用を促すために、有酸素運動ミトコンドリアを活性化させるぞー。」と言うべきなのです。そして、筋肉をつけたいヒトは、「アミノ酸からタンパク質の同化作用を促すために、プロテインを飲むことにするよ」などと言えばばっちりです。実際にこんなマニアックな日常会話をしている方はいないと思いますがw

ともかく、異化はエネルギーが取り出され、同化はエネルギーが蓄えられます。エネルギーは形がありませんので、何かを使って受け渡しをしなくてはいけません。電気エネルギーを運べる乾電池のような入れ物が細胞の中にも必要なのです。このエネルギーの持ち運び用の入れ物にあたるのが、ATPという分子なのです。

 

ATPとは??

ATPとは、アデノシン三リン酸のことです。英語で書くと、「adenosine triphosphate」なので、ATPと略されます。

細胞内の代謝によるエネルギーのやりとりを仲立ちする分子のことです。

 

アデノシンにリン酸が3つ結合しているからATP

構造は「アデニン(塩基)+リボース(糖)+リン酸×3」で、リン酸どうしの結合は、高エネルギーリン酸結合とよばれる、たくさんのエネルギーを必要とする特別な結合をしています。アデニン+リボースの部分をアデノシンとよびます。

アデノシンに3つリン酸がくっついている構造をしているので、アデノシン3リン酸というわけですね。ATPのTは3という意味なのです。トリプルとかのtriです。

一番端っこの高エネルギーリン酸結合が切れるとき、エネルギーが放出されます。

結合が切れてしまうので、アデニン+リボース+リン酸×2の化合物とリン酸に分解されます。リン酸が二つだけ結合したアデノシンは、アデノシン二リン酸「adenosine diphosphate(ADP)」という違う物質になります。

ADPにエネルギーを使ってリン酸が結合すると、ATPになるのです。

このように、ATPはADP→ATP→ADP→・・・・と繰り返しエネルギーの受け渡しにはたらいているのです。

 

ATPの大きさと存在する場所

ATPの分子量はだいたい500くらいです。電子顕微鏡でもみることができない小さな小さな物質です。核の中にもあります。ミトコンドリアの中にもあります。葉緑体の中にも細胞質の中にも存在し、細胞内で生じたエネルギーの受け渡しを行っているのです。

ATPは80年前にカール・ローマン博士によって、筋肉の抽出物から発見された化学物質です。

 

魚の活〆はATPを分解させないため

生物はATPをADPに分解することで動いています。これはヒトだけでなく魚も鳥もアメーバも植物も同じです。

魚を釣った時、活〆をした魚の方が鮮度が保たれるというのをご存知の方も多いと思います。この活〆の目的には、ATPが深く関わっているのです。

魚の鮮度が保たれるとは、死後硬直が起きるまでの時間が長いと言い換えることができます。死後硬直がおきる理由こそが、ATPが不足し筋肉を動かすエネルギーがなくなるためなのです。魚を釣り上げると、魚は空気中では呼吸ができないため酸素が体内の細胞に供給されなくなります。すると、細胞内のミトコンドリアは呼吸ができなくなり、エネルギーを取り出すことができなくなります。ATPを合成できなくなるわけです。

一方で、魚はカラダをバタバタと暴れさせます。細胞内に残っていたATPをADPに分解してエネルギーを取り出し、運動エネルギーに変えているのです。呼吸ができないのでADPはATPにもどることはできません。バタバタさせればさせるほど、急速に魚の体内からATPが存在しなくなります。使用できるエネルギーがなくなってしまうので、魚のカラダは動くことができなくなり、カチコチに硬くなるのです。これが死後硬直の状態です。出来るだけ素早くバタバタ暴れさせないようにすることで、ATPの消費を抑えて鮮度を保つために活〆を行っているのです。

 

 

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