日常を科学したい

理系ママが、日常生活のなかの理科雑学について、ちょっと詳しく書いています。

カラダを守る!免疫のしくみ【第1の防御~第2の防御】

ヒトのカラダの内部の環境は、免疫のはたらきで守られています。免疫とはカラダを守る戦士のようなものなのです。免疫のはたらきを、できるだけ用語を使わずに説明してみました。

 

 

ヒトのからだは桃源郷

外部からヒトのからだを侵略して乗っ取ろうとする敵を排除し、体内の環境を一定に保とうとする働きを免疫といいます。

ヒトのカラダを城とするならば、免疫ではたらく細胞は、侵略者から城を守る戦士たちといえるでしょう。

ヒトの体内環境は非常に心地よい場所です。温度は一定、水も栄養も使い放題、新鮮な酸素もいつでもデリバリーしてくれている場所ですから。他の生物に寄生してしか生きることの出来ない菌やウィルスにとって、カラダの内部は桃源郷のように見えているかもしれません。無理してでも体内に入り込もうと挑戦する菌やウィルスは後を断ちません。

だからと言って菌やウィルスを招き入れることはできません。菌やウィルスが好き勝手に住み着き、増殖したヒトのカラダは、ヒトとしての働きを失ってしまうからです。

ヒトのからだは、絶えず外部からの侵入を防ぎ続ける必要があるのです。

そこで活躍しているのが、カラダ防衛隊「免疫」の戦士たちというわけです。免疫の力は組織的で強力ですが、あくまで侵入者の排除を目的としている防衛隊です。防衛だけを行い、別の生物を侵入することはしていません。

そんな免疫は、大きく3つの段階で体を守っています。


第一の防御は守る!

カラダという城を守る免疫戦士たちが、外部からの無数の敵全てに対応していたら、疲れ果ててしまいます。

ならばどうするか。

まずはカラダ城を丈夫な壁で覆い、敵を侵入させにくくしよう!

これが、第一の防御です。

第一の防御とは、カラダの外側を覆うものとその働きを指します。

カラダの外側には何がありますか?皮膚ですよね。そう、すなわち皮膚や粘膜の存在自体が第一の防御というわけです。

さらに皮膚からは汗などの分泌物を出しています。これも第一の防御のひとつです。

汗は弱酸性の性質です。この性質により、外部からの異物をカラダに付着しにくくすることができるのです。

また、胃の中には胃液があります。この胃液、レモンよりも強い酸性です。強い酸により、多くの菌やウィルスがからだの内部にはいる前に死滅していくのです。

イメージとしては、カラダ城丈夫な外壁で覆われ、外壁には触ると溶ける魔法薬を定期的に流つづけることで、敵の侵入を拒んでいるといったところでしょうか。

 

*1

 

第二の防御は腹ペコ番犬!

第二の防御は食作用とよばれます。

食作用を行うのは、侵入者は誰であれ、問答無用に立ち向かう勇敢な番犬たちです。彼らはいつでも腹ペコなので、侵入者を丸のみしてしまいます。これを食作用といいます。

丸のみするために体は非常に大きいですし、どんな隙間にも入り込めるしなやかな体つきをしています。

私の中では、ケルベロス的なちょっと異能な感じの番犬なイメージです。

番犬たちは3つのグループに分かれて働いています。グループ名は好中球、マクロファージ、樹状細胞といいます。

 

トロール&戦闘担当の好中球

グループAの好中球グループは、トロール&戦闘担当です。普段は血管の中をグルグルと巡っています。好中球グループのメンバーは一番数が多く、一つのカラダで数千個もグルグルしています。一般的に白血球とよばれるのは、だいたい好中球です。

カラダの血管中に、大量の番犬がグルグルわんわんしているイメージです。心強いですね!

そのようなかんじで、大量にグルグル巡っているので、異物が侵入したら素早く向かうことができますし、すばやく戦闘を始めてくれる頼もしい番犬です。

 

隠密&戦闘担当のマクロファージ

グループBのマクロファージグループは、一番大きな体強い食欲の番犬たちです。担当は隠密&戦闘です。

隠密らしく、普段は外部に近い細胞の隙間で身を隠していますが、自分の担当のエリアに異物が侵入すると、いち早く駆け付け、食作用でやっつけます。

戦うだけでなく、彼らはパトロール中の好中球を呼び寄せます。

更に、きちんと司令塔(脳)への報告も欠かしません。報告を受けた脳は、カラダ城の空調を調整し、番犬たちが戦いやすくしてあげます。番犬たちは40度くらいが一番動きやすいので、カラダ城の温度は高くなる事が多いです。

風邪を引いた時に発熱したり、怪我をした時に患部が熱を持ったりするのはこのためなのですね。

ちなみに、患部が熱をもつだけでなく、腫れることもあるかと思います。これもマクロファージが、パトロールしている好中球を集めるために、血管を膨らませた結果です。

患部が鼻の中の場合、鼻の血管がひろがり鼻の穴をふさぎがちになります。すると、空気が出入りしにくくなります。これが鼻づまりというわけです。

膨れ上がる患部や上がる体温は異物と戦っている証なのです。

 

伝令の樹状細胞

グループCの樹状細胞グループは一番食欲は少ないけれど、足が速い番犬たちです。

普段はマクロファージと同様、細胞の隙間で潜伏しており、異物が侵入するとパクッと異物を咥えます。その後、戦闘は行わず、異物をくわえたまま、素早くリンパ管の中へ飛び込んでリンパ節へと移動していきます。

 

向かった先のリンパ節には何があるのでしょうか。
リンパ節には免疫の最終強力部隊であるリンパ球部隊がひかえています。
樹状細胞は、異物の情報を最強部隊に伝える、伝令の役割を担っているのです。

情報を受け取った最強リンパ球部隊は、準備を整えはじめます。

 

このリンパ球部隊こそが、第3の防御なのですが、長くなってきたので

カラダを守る!免疫のしくみ【第3の防御】に続きを書いています。

よろしければ、ぜひ読んでください。

*1:胃の中はカラダの外側

何かしらで囲まれている場所が体の中とすると、外部とつながっている場所はカラダの外といえます。胃の中はどうでしょうか。

口は外部とつながっていますよね。口は食道、胃、腸、肛門とつながり、最終的に再び外部とつながっています。

このように考えると、胃の中はカラダの外ということになります。

私たちは食物を口から食べて消化して排泄しますよね。消化管の中が外側だとする定義で考えると、食品も排泄物もカラダの外側をつたわしているだけということになります。

小腸から栄養素を血管やリンパ管の中に吸収した時に初めて、体の内部に栄養を取り込んだといえるわけなのです。

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