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理系ママが、日常生活のなかの理科雑学について、ちょっと詳しく書いています。

カラダを守る!免疫のしくみ【第3の防御】

 

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カラダを守る免疫は第1、第2、第3の防御に分類できます。

ここでは免疫の最終段階であり、最強の戦士たちがカラダを守る、第三の防御について書いていきます。

第1と第2の防御については

カラダを守る!免疫のしくみ【第1の防御~第2の防御】

にまとめています。こちらも見ていただけたら嬉しいです。

 

 第3の防御は獲得免疫

第3の防御の名前を獲得免疫といいます。

そこで活躍する最強の戦士たちの名前はリンパ球といいます。リンパ球は通常、リンパ節の中でスタンバイしています。
リンパ球は最強の戦闘力をもっていますが、それぞれひとつの異物しか排除できないという特徴を持ちます。超・専門家部隊というわけですね。

外部からは様々な異物が侵入を図ってきます。

そのため、多種多様な種類のリンパ球が、少数揃えられ、リンパ節の中でスタンバイしているのです。

私の中では、起動前のロボット兵が格納されているイメージです。自分の担当の異物が来ない限り、格納庫で眠り続ける最強の戦士たちです。

リンパ球戦士を眠りから覚ます役割は、樹状細胞が行います。樹状細胞は第2の防御で活躍した番犬、食細胞の一つです。

 

 

異物侵入の組織にいた樹状細胞は、異物が混入すると、パクっと異物をくわえます。

そのまま、リンパ管に飛び込み、一目散にリンパ節へと向かうのです。

 

リンパ節では、無数のリンパ球戦士が眠っています。

樹状細胞は、無数に存在するリンパ球戦士の中から、今回の異物を専門とするリンパ球戦士を見つけ出し、眠りを覚まさなければいけません。

 

どうしたら適応するリンパ球戦士を見つけ出し、眠りをさますことができるのでしょうか。

樹状細胞がリンパ節にいる時もなお、異物侵入の組織では、仲間の食細胞たちが戦い、必死に異物のさらなる侵入を防いでいます。急がなくてはいけません!

 

樹状細胞はおもむろに、持っていた異物を眠るリンパ球戦士にかざし始めました。

そうです。異物こそが、その異物を専門とするリンパ球戦士を目覚めさせる鍵となるのです。

もはや異物と呼んでいる場合ではありません。抗原と呼ぶことにします。

 

ひとつひとつ、リンパ球戦士に抗原をかざしていく樹状細胞。多数のリンパ球戦にひとつひとつ丁寧に、でも素早く確認していきます。

ついに、ぴったりと合う鍵穴を見つけることができました!

 

抗原の提示を行うことで、抗原に特異的なリンパ球戦士が目を覚ましたのです!

 

ここから主人公はリンパ球戦士になります。第3の防御、適応免疫の開始です。


さて、リンパ球戦士も役割でいくつかのチームに分けることができます。

 

キラーT細胞

killre=殺し屋の名前の通り、キラーT細胞は直接感染した細胞ごと攻撃する江戸の火消し屋です。

 

リンパ節で、樹状細胞に抗原提示され、目覚めたキラーT細胞がまず行うことは、増殖です。分裂に分裂を繰り返し、抗原に特化した火消し屋部隊をつくりあげるのです。

増殖したキラーT細胞達は、リンパ管を通り感染組織へと移動します。

感染組織でキラーT細胞が見たものは何でしょうか。

抗原に占領された、いくつもの哀れな細胞の姿です。もはや細胞としての機能を失われ、抗原の生産工場となってしまっています。

このままでは、感染した細胞だけでなく、近隣の細胞へも感染が広がってしまう!

その時、キラーT細胞は、江戸時代の火消し屋たちのような働きを見せます。

江戸の火消し屋たちは、火事が起きると、現場の建物や構造物を破壊して、取り除くことで延焼を防ぎ、消火につなげる破壊消火を行っていました。街を守るために、街を構成する家を壊すという、豪快な解決法です。

キラーT細胞も同じです。カラダを守るために、カラダを構成する細胞を破壊していくのです。

感染細胞ごと抗原を攻撃し、細胞ごと死滅させるはたらきが、キラーT細胞の役割です。

ちなみに、

死滅した細胞は、大食感な番犬のマクロファージが食作用でぺろりときれいに処理してくれます。

 

2、ヘルパーT細胞

こちらも、helper=介助者の名前の通り、他の戦士を的確にサポートし、さらに活躍させる役割を担っています。

器用で冷静な、敏腕執事といったところでしょうか。

リンパ節で、樹状細胞の抗原提示で目覚めたヘルパーT細胞も、まずは増殖を行います。

その後、感染組織への移動すると、大食漢な番犬マクロファージを応援します。

ヘルパーT細胞に応援された番犬マクロファージは、めきめきと張り切り始めます。今までの食作用をさらに強め、バクバクと異物を排除していくのです。

ヘルパーT細胞の仕事はまだまだ終わりません。リンパ節に残ったヘルパーT細胞は、B細胞チームに抗原を提示する大事な役割を行っています。

 

3、B細胞 

B細胞はスナイパーです。

感染組織へ直接乗り込んでいったT細胞達に対し、B細胞はリンパ節に留まったままカラダを守ります。

抗原を追尾して無効化する弾丸をリンパ節から打ち込むのです。

リンパ節で、樹状細胞の抗原提示で目覚めるところまではB細胞も同じです。

すぐに活動を開始したT細胞たちと比べ、B細胞は慎重派です。

ヘルパーT細胞の指示を待つのです。

自分の担当の抗原と一致するヘルパーT細胞がやってくるのを待ちます。

他の抗原担当のヘルパーT細胞の言うことは聞きません。自分と同じ抗原担当の言葉だけを聞く慎重さを持っています。

「私の武器は強力だ。だからこそ、本当に信頼のおける相棒からしか指示を受けないのだよ。」

 

さて、B細胞の元に担当の抗原が一致するヘルパーT細胞がやっていました。

ヘルパーT細胞は、B細胞に増殖を指示します。

そうして、はじめてB細胞は増殖をはじめるのです。

増殖したB細胞達は、抗原を狙う弾丸を生産し始めます。

弾丸の名前を抗体といいます。

抗体を生産する時、B細胞は形質細胞と名前を変えます。形質細胞となることは、抗体を生産するプロになった証です。※分化とよばれます。

形質細胞で作られた抗体弾丸は、血流にのって感染組織へ打ち込まれます。

感染組織へ到達した抗体弾丸は、抗原と結合し、無害化させます。

無毒化された抗原も、元気なマクロファージの食作用によって排除されていきます。

 

予防注射は弱体化させた抗原を体内にいれることで、この抗体弾丸を作る練習をすることが目的です。一度抗体弾丸を作る経験をしていれば、次に本物の同じ抗原が体内に侵入した時、一度目よりも素早くたくさんつくることができますからね。

ちなみに、本来ならば異物でないものに対して、抗体弾丸を発射してしまうことが、アレルギーを引き起こします。 

 

数々の戦いの果てに、異物は全てカラダ城から排除されることができた。こうしてまた、体内環境の恒常性は維持されたのであった。

しかし、異物の脅威はこれらも続く。まけるな免疫!戦い続けろ免疫!!

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