驚きの生物として紹介されることも多い種間雑種個体(ハイブリットアニマル)ですが、私たちの、身近な生き物としても存在します。
今回はラバ・イノブタ・アイガモの3種類の家畜に注目しました。それぞれどのような生物なのかをまとめていきます。
ハイブリットアニマルとは
ハイブリットアニマルとは、異なる「種(しゅ)」を掛け合わせた動物のことです。
では、種(しゅ)とはどのようなものでしょうか。
種(しゅ)とは、生物を共通性によって分類する基本的な単位のことです。同じ種の間では、交配することで生殖能力をもつ子孫を残せるとの定義が現在最も多く使用されています。
この考え方で、種が同じか違うかを見分けるポイントは「生殖能力を持つ子孫」という点です。
違う種同士でも「子」はできることはあるけれど、「孫」はできないということです。
異なる種を掛け合わせてできた生物のことを種間雑種個体(ハイブリットアニマル)と呼びます。
これらの生物は同種?それとも異種?
ロバ×ウマ→ラバ
メスのウマとオスのロバを掛け合わせて生まれた生物をラバと言います。北米やメキシコ、スペインなどで古くから家畜として存在していた交雑種です。
ちなみに、メスのロバとオスのウマから生まれたものはケッティとよばれます。
ラバはケッティよりもカラダも大きく、育てやすいので広く飼育されていました。その性質はウマの良い部分とロバの良い部分を兼ね合わせたものです。
病気に強く丈夫で粗食に耐えます。足腰が強くヒヅメもかたいので山道や険しい道でも物を運んで進めます。ウマよりも学習能力が高く調教もしやすい性格です。
そんなラバですが、生殖能力は非常に乏しくほとんど子孫を残すことができません。
つまり、ロバとウマは異なる種であると言えるわけです。
イノシシ×ブタ→イノブタ
オスのイノシシとメスのブタを掛け合わせて生まれた生物をイノブタと言います。日本でも家畜化され、ブランド肉として売られています。有名なイノブタとしては、和歌山県すさみ町のイブの恵みや、淡路産の金猪豚などがあります。赤身が濃くあっさりした味ながらも甘味のある脂肪がとろける美味しさです。
美味しいだけでなく、雑食性が高いことや、ブタよりも暑さ寒さにつよく丈夫な性質も持っています。
そんなイノブタ、イノブタ同士でも、イノシシとでも、ブタとでも交配して子孫を残すことができます。先ほど紹介しました金猪豚は、イノブタやブタを複数回も掛け合わせてくられた品種です。
つまり、イノシシとブタは同じ種であると言えるわけです。ブタはイノシシ種の中の亜種という位置づけなのです。
アヒル×マガモ→アイガモ
水田の雑草を駆除する有機農法(アイガモ農法)で有名なアイガモも、アヒルとマガモを掛け合わせたものです。当初、美味なマガモと飛べないアヒルを掛け合わせることで、美味でつかまえやすい食用家畜を目的だったそうです。
実際アイガモは飛べないのかというと、たまに大人になると飛べる個体もいるそうです。同じアイガモの中でも、飛べるものと飛べないものがいるなんて面白いですよね。
そんなアイガモは、生殖能力をもっています。つまり、マガモとアヒルは同じ種と言えるわけです。そもそもアヒルはマガモを家畜化したものなのでした。
しかしアイガモの繁殖力は、マガモやアヒルに比べると弱めです。これが意味することは、マガモとアヒルは長い年月をかけてそれぞれの環境に適応した生活を送ってきたことで、すこしずつ種間が離れていっているのではないかと考えれれるわけです。今は同じ種のマガモとアヒルも、もしかしたら数千年後には別の種になっているかもしれません。
ちなみにアイガモ農法を行う際、田んぼの周りを網で囲みます。これは、カラスなどの天敵からアイガモのひなを守る目的もありますが、田んぼからアイガモが逃げ出さないようにする意味合いもあります。
なにしろマガモもアイガモもアヒルも同じ種なので、アイガモが逃げ出すと野生のマガモと交雑する可能性があるのです。野生のマガモとアイガモが交雑することで純粋なマガモな遺伝子が減っていってしまう遺伝子汚染が懸念されています。飛べる力が弱いマガモが生まれ、渡り鳥としての能力を失ってしまったりと自然環境に影響を与えてしまうかもしれないからです。
ちなみに水田の雑草を駆除していたアイガモは、稲穂がでることに田んぼから引き揚げ、太らせた後ハムや鴨肉として食されます。
まとめ
● ウマとロバ→異なる種
● イノシシとブタ→同じ種
● マガモとアヒル→同じ種
家畜の中にも、違う種の掛け合わせによるもの、同じ種のもの、同じ種だけれど生殖能力が弱いものなど、さまざまなのですね。