尾てい骨などの痕跡器官って、ヒトの進化を感じるワクワク器官だと思いませんか?
そんなロマンあふれる 痕跡器官について思いを巡らせました!
痕跡器官とは
痕跡器官とは、
からだに残る、今の生活には使用しない器官の跡のことです。進化の証拠とされています。
クジラで考える
例えば、クジラ。
海の中で暮らし、一生歩くことのない生き物です。そんなクジラの骨格を見ると、小さな後ろ足の骨が存在します。痕跡器官です。
このことから、クジラの祖先は、一度陸上に進出したのち、再び海に戻った生き物なのではないかと推測できるわけです。
また、クジラのDNA解析の結果からも、クジラに遺伝子的に近いのはカバであると分かっています。
これら知識を踏まえた上で、
ちょっと想像してみてください。
クジラやカバの祖先の生物がより繁栄しやすい場所を求めて陸上から水中に戻ることを決意しました。
淡水に戻ったもの、海水に戻ったもの、沼地や湿地を選んだものもいたかもしれません。
そんな中、海水に戻った祖先生物は、より深く潜れるものだけが生き残っていきます。
何十年も何百年もかけて世代を重ねながら、より深く、より深く海の中に進出していくのです。
いつしか泳ぐためのヒレが発達し、後ろ足が無くなっていきました。
今ではクジラは陸上で生きていくことはできません。しかし遠い遠い昔に陸で暮らしていた証として、ひっそりと後ろ足の骨格がのこっているのです。
どうでしょうか。
この壮大なる進化のストーリーを想像していると、種の繁栄にかける本能的熱意や、今の姿になるまでに砕け散っていった生き物たちの儚さなどがジンジンと感じられませんか⁈
痕跡器官には壮大なロマンが詰まっているのです。
ヒトの場合
そんなロマンあふれる痕跡器官を我々ヒトも持っています。
尾てい骨やダーウィン結節、副乳や鳥肌などです。
それぞれ、尻尾、尖った耳、複数の乳房、多毛だった頃の痕跡器官とされています。
ヒトの祖先の形はキツネザル風!
そもそも、ヒトの先祖となる生き物はどのような形をしていたのでしょうか。
ヒトはオランウータンやゴリラなどの霊長類の仲間です。
霊長類の先祖となる生物は、今のキツネザルによく似た生物であるとされています。化石霊長類グループのアダピス類とよばれるそうです。
キツネザルの姿をみてみると、長い尻尾、尖った耳、複数の乳房をもち、ふさふさの毛でからだ全体た覆われていますよね。
尻尾の跡が尾てい骨であることは多くの人が周知のことでしょう。
キツネザルに似た先祖生物では重要な働きをはたしていた尾尻は、キツネザルと同じ働きをするならば、空中でバランスを取るのに欠かせない器官であったと推測できます。
そんな祖先生物が陸上で暮らし始めました。不安定な足場でバランスを取る必要が無くなった尻尾はその役割を失っていきました。
二足歩行の際には、常に上に上げておかなければいけない長い尻尾はむしろジャマだったかもしれません。
尾てい骨という痕跡器官ひとつに注目するだけでも、ヒトの祖先が陸上生活に適していったストーリーに思いを馳せることができますね!
参考文献
利用案内・情報 ≫ ホットニュース ≫ 2013-07-18 :: 国立科学博物館 National Museum of Nature and Science,Tokyo